新車を購入するとき、販売店でこんな説明を受けた経験がある人も多いのではないでしょうか。
最近では、車の購入方法として「残価設定型ローン」、いわゆる残クレを選ぶ人も増えています。毎月の返済額を抑えやすく、比較的高額な車でも購入しやすいことが大きな特徴です。
一方で、月々の返済額だけを見て判断すると、ローン全体でどれくらい支払うことになるのか分かりにくいという面もあります。
特に確認しておきたいのが、契約期間が終了するタイミングです。
残クレでは、購入時に車の将来価値を「残価」として設定し、その金額を最後まで残して返済していきます。そのため、毎月の支払いは通常のローンより低くなりやすい仕組みです。
では、実際に同じ価格の車を購入した場合、通常ローンと残クレではどれほど違いが出るのでしょうか。
今回は、400万円の新車を5年間利用するケースを例に、月々の返済額だけでは分からないポイントを整理してみます。
まず、5年後の残価を140万円、つまり車両価格の35%と仮定します。
残クレの金利を5.2%、通常ローンを7.5%として計算すると、残クレの毎月の返済額は約5万6000円。一方、通常ローンでは約8万円となります。
毎月の負担だけを比較すると、残クレのほうが約2万4000円少なくなります。
年間で考えると約29万円、5年間ではかなり大きな差に感じられるでしょう。
この「月々の負担の軽さ」こそ、残クレの大きな魅力です。
しかし、ここで一度立ち止まって考えたいポイントがあります。
残クレの支払いが少なく見えるのは、車両価格の一部を最後に残しているからです。
つまり、契約終了時には、その残価についても選択を迫られることになります。
車を返却するのか、残価を支払って乗り続けるのか、それとも新しい車へ乗り換えるのか。契約前には、この部分まで含めて資金計画を考えておくことが重要です。
例えば、先ほどの400万円の車では、5年後に140万円の残価が設定されています。
59回までの返済額だけを見ると、残クレは約331万円。一方、通常ローンは約473万円です。
ここだけを見ると、残クレのほうが約140万円も安く見えます。
ところが、この差のほとんどは、最終的に残されている140万円の存在によるものです。
もし5年後に車を買い取るのであれば、この金額を別途支払う必要があります。
一方、通常ローンの場合は、5年間の返済を終えれば基本的にローン残高はなくなります。
ここからが、車の購入方法を考えるうえで重要なポイントです。
もし5年後も同じ車に乗り続けたいのであれば、契約時点で設定された残価をどうするのかをあらかじめ考えておく必要があります。
反対に、一定期間ごとに新しい車へ乗り換えたい人にとっては、残クレの仕組みが使いやすいケースもあります。
さらに、残価率が高く設定された車では、毎月の支払いはもっと小さくなる可能性があります。
同じ400万円の車で、5年後の残価を50%、つまり200万円とした場合を考えてみましょう。
この条件では、残クレの毎月の返済額は約4万7000円まで下がります。
通常ローンの約8万円と比べると、毎月約3万3000円もの差です。
「これなら少し上のグレードにも手が届きそう」と感じる人がいるのも不思議ではありません。
ただし、毎月の支払いが軽くなるほど、契約終了時に残っている金額は大きくなります。
だからこそ、残クレを検討するときは「毎月いくら払うか」だけではなく、「契約終了時まで含めて、車にいくら使うのか」を見ることが大切です。
そして、もう一つ見逃せないのがローン金利そのものです。
販売店の通常ローンだけを比較対象にすると、残クレのほうが有利に見えるケースがあります。
しかし、金融機関などが提供するマイカーローンまで選択肢を広げると、比較結果が変わる可能性があります。
例えば固定金利3.5%で400万円を5年間借りた場合、毎月の返済額は約7万3000円。59回分の返済額は約429万円となります。
販売店の通常ローンと比較すると、毎月の負担は約7400円、4年11カ月では約43万円の差になります。
さらに、車を長く乗る予定なら、返済期間を延ばすという考え方もあります。
同じ金利条件で7年間のローンにすると、毎月の返済額は約5万4000円。毎月の家計への負担を抑えながら、残クレとは異なる形で車を所有できます。
もちろん、長期間乗る場合には車検やメンテナンス、消耗品の交換なども考えておく必要があります。
では、結局のところ残クレは避けたほうがいいのでしょうか。
必ずしもそうとは言えません。
例えば、数年ごとに車を乗り換えたい、月々の支払いをできるだけ抑えたい、契約終了時には車を返却する予定がある、といった人にとっては、残クレが便利な選択肢になることがあります。
一方で、購入した車を長く乗り続けたい人や、最終的には自分の所有車として乗り続けたい人なら、通常ローンや低金利のマイカーローンも比較する価値があります。
特に大切なのは、金利の数字だけで判断しないことです。
車両価格、頭金、金利、毎月の返済額、最終回の残価、返却条件、走行距離などをまとめて確認することで、自分に合った購入方法が見えやすくなります。
そして、今回のシミュレーションから分かる最も大きなポイントは、「月々の支払いが安い=総合的に安い」とは限らないということです。
残クレは、車両価格の一部を将来に残すことで、現在の返済負担を軽くする仕組みです。
だからこそ、5年後にどのような選択をするのかまで考えてから契約することが重要になります。
新車の価格が高くなっている今だからこそ、月々の金額だけを見るのではなく、5年後、7年後まで含めた総額で比較することが、納得できるカーライフにつながるでしょう。

